【社宅制度の基本】本人負担分の家賃の考え方と扱い方
中小企業の経営者や経理・人事担当者の皆さま、社宅制度の家賃負担について、税務上の正しい取り扱いをご存じでしょうか?
「本人から家賃の一部をもらえば非課税でいいの?」「給与課税になる条件って?」「どういう基準で本人負担を決めればいい?」
このような疑問や不安を抱えたまま社宅制度を運用していると、税務調査で“給与扱い”とされ、追徴課税が発生するリスクもあります。
本記事では、社宅制度における本人負担分の家賃の考え方と、税務上の正しい扱い方、実務運用上のポイントをわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、法令に沿った安心・安全な社宅制度を構築でき、社員にも喜ばれる福利厚生の一環として活用できるようになります。
特に、社宅制度をこれから導入する予定の企業、すでに導入しているが運用方法が曖昧な中小企業のご担当者さまは、ぜひ最後までお読みください。
社宅制度とは?中小企業にも導入が進む福利厚生
社宅制度とは、会社が所有または借り上げた住宅を、社員に提供する制度です。
近年では、次のような理由から中小企業でも導入・見直しが進んでいます。
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採用活動での差別化(地方からの人材確保など)
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従業員満足度の向上
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転勤時のサポート制度
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実質的な給与引き上げ(手取り向上)
しかし、制度を活用する上では「税務上の取り扱い」=本人負担額の設定と課税関係の理解が不可欠です。
【重要】社宅制度と税務上の「経済的利益」扱い
会社が全額負担で住宅を提供した場合、「本来は自己負担すべき費用を会社が肩代わりしている」とみなされ、その分が従業員の給与所得として課税対象になります。
このような給与課税を防ぐには、以下の条件を満たすことが重要です。
■課税されない条件(福利厚生として非課税にするための基本ルール)
社宅が法人契約であること(借主が会社)
社員が「一定額以上の家賃(賃貸料相当額)」を負担していること
つまり、適正な本人負担額を設定することが最大のポイントです。
本人負担分の家賃:どう計算するのが正解?
税務上の「賃貸料相当額」とは?
本人が負担すべき金額(=最低限負担すべきライン)は、税務上「賃貸料相当額」と呼ばれ、次のように定められています。
【賃貸料相当額の計算式】
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① (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント ② 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル)) ③ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント
(注)会社などが所有している社宅や寮などを貸与する場合に限らず、他から
借りて貸与する場合でも、上記の(1)から(3)を合計した金額が賃貸料相当額
となります。
※この算式は、通達に基づいて計算されるものであり、実際の市場賃料とは異なることが多いです。
賃貸料相当額以上の家賃を本人が支払っていれば、非課税
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社員が賃貸料相当額と同額以上の金額を会社に支払っていれば、経済的利益とみなされず、給与課税の対象外になります。
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逆に、それ以下の場合には、差額が給与として課税されます。
本人負担額の設定における実務上のポイント
1. 賃貸料相当額の定期的な再計算
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固定資産税課税標準額は変動するため、最低でも3年ごとに再確認しましょう。
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固定資産税通知書の保管も忘れずに。
2. 給与と分けて徴収するのが理想
本人負担家賃を給与から控除する場合には「福利厚生としての家賃負担」と明示できるよう、科目分けを行いましょう。
例:
給与明細内訳に「社宅費控除」欄を明記 → 所得税計算には含まれない処理に
社宅制度の導入・見直し時に気をつけるべきこと
項目 | 確認ポイント |
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賃貸契約の名義 | 必ず法人名義で締結 |
賃貸料相当額の算出 | 固定資産税課税標準額を基に計算 |
従業員負担額の設定 | 税務リスクを避けるには、賃貸料相当額以上を設定 |
課税リスク | 差額が生じた場合、その分が給与として課税対象に |
社内規定 | 必ず書面で整備しておく |
まとめ
社宅制度は、中小企業でも導入しやすく、社員満足度の向上・採用強化・実質的な報酬増加につながる有効な福利厚生制度です。
しかし、「本人負担額の設定」と「税務上の非課税ルール」を誤ると、思わぬ給与課税のリスクを抱えることになります。
運用上のポイントまとめ
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本人負担額は税務上の賃貸料相当額以上に設定
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給与明細に明記し、税務署へ説明できる証拠を残す
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3年ごとに固定資産税課税標準額を見直し、再計算
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明確な社内規定・管理ルールを整備
弊社では、社宅制度の導入支援・税務リスクのチェックなど、制度運用をトータルでサポートしています。
「うちは大丈夫かな?」と感じたら、ぜひお気軽にご相談ください。
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